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証券システムは高負荷に強く
遅延が少ないことが重要

田近 和也
株式会社インタートレード
業務執行役員
金融ソリューション事業本部
システム開発第一部長

インタートレード主力製品ディーリングシステム
「TIGER Trading System」

御社の主力製品の証券ディーリングシステム「TIGER Trading System」について教えてください。

インタートレードでシステム開発第一部長をやっております田近と申します。「TIGER Trading System」のパッケージには、「自己取引部門向け」、「委託取引向け」、また、「J1※1」の3つあります。

その内の2つの説明をしますが、1つ目の「自己取引向けのパッケージ」というのは、証券会社の自己取引部門の方達が自分たちで売買をして、収益を上げるシステムです。2つ目の「委託取引向け」というのは、証券会員ではない投資信託の運用会社などは、東京証券取引所(以下、東証)に直接注文が出せないので、その注文を仲介する証券会社のためのシステムとなります。

ニーズに応えた取引所マッチングエンジン「ITMonster」

過去の大きな実績として、取引所マッチングエンジン「ITMonster」について分かりやすく説明お願いします。

「ITMonster」は東証と同様の取引機能を持つマッチングエンジンです。このシステムは売買したい人の注文を集めた上で、最適な価格でマッチングできるオークション形式を採用しています。

マッチングの際に売買注文の情報を集約、気配値(けはいね:株式などを売りたい人と買いたい人が希望する株価)を算出、その株価を一斉配信する機能を持っています。このように「ITMonster」は集約、算出、配信など多くの機能を必要とする事業者様向けのパッケージとなっております。

やはりニーズがあったから出てきた商品なのですか?

そうですね。東証ではなく、PTS(私設取引所)で、中核システムとして利用されました。ネット証券が立ち上がっていくなかで、大手ネット証券様に採用されました。

一瞬で価値が変動する日経平均先物 タイミングを逃さないソフトウェアが必須

証券関連のシステムで、注文時の遅延を最小限に抑えるというのは大事なのでしょうか。

そうですね。とても大事です。大量の注文を一気に発注するインデックスアービトラージ※2 という手法があります。「日経平均先物」と言うと聞かれたことがあるかもしれません。日経平均株価とは日本経済新聞社が採用した225銘柄の株価の平均値ですが、これを指数化した取引が日経平均先物取引です。この225銘柄の平均株価と、日経平均先物の金額は常に一致しているわけではないのです。

例えば、日経平均先物の方が225銘柄を平均化した金額よりも一瞬安いこともあるし、高いこともある。この2つのものは本質的に価値が同一なのですが、別々に売買されているので、常に価格が一致するわけではないのです。その価格に乖離が出た瞬間に安い方を買って、高い方を売る。乖離が収束したときに買った方を売り、売った方を買い戻せば差額分が理論的に儲かるというわけです。そうすると、225銘柄を一気に売買するスピードが必要で、何ミリ秒かでもずれてしまうと「儲かるはずだったのに損をした」という結果になってしまいます。

先物の売買と株の売買は全く別々に動いていますので、たまたま価格に乖離が出ることがあります。その瞬間をトレーダーは狙っています。なので、大量の注文を高速で出すシステムが必要になるのです。

吸収合併でシェアナンバーワンのインタートレードへ

田近さんのインタートレードへの入社理由が吸収合併と聞きましたが、具体的な経緯を伺えたらと思います。

当時私は、株式会社ブラディアで勤務していました。ある日、業界大手のインタートレードに吸収合併されたことがきっかけです。

その頃のブラディアのシステムが現在の「TIGER Trading System」になって引き継がれているということですよね。

そうです。中身はだいぶ変わってきてはいます。しかしサーバー側のシステムはほぼそのまま残っています。操作画面は、お客様のご要望にあわせて随分と変化しました。しかし、ブラディアで生まれた高速な処理機能は、システムの根幹機能として今でも稼働しております。

現在のインタートレードの導入実績

過去においては、重要な社会インフラとしての大きな実績があるようですが、最近の導入実績はどのようなものがありますか?

外資系の会社だとアービトラージをするような大量の注文を高速で出す必要があり、そのニーズに応えるために当社のシステムが採用されました。また、異業種からの証券業への参入が続いてますが、インターネット企業の最大手であるLINE株式会社様が立ち上げたLINE証券様のシステムの一部に、当社のシステムが採用されております。株は基本的に100株単位で売買する必要があり、提示される株価の100倍のお金が必要になりますので、ある程度資金に余裕のある人しか投資を始められません。そこでLINE証券様は投資家の裾野を広げようと、若い人でも気軽に株が買えるように「1株単位で株を購入できる」環境の提供を始めました。その売買処理に当社のシステムが使われております。

開発者トップとして、チームメンバーのパフォーマンスを引き上げる方法

開発部のトップという立場で苦労していることや、やり甲斐などありますでしょうか。

やはり、チーム全体のパフォーマンスを引き上げる方法がないかを常に模索しています。メンバーは皆、得意な分野がそれぞれ違います。様々なプロジェクトで、「一番力が発揮できる方法は何か?」、「そのために何ができるか?」など、各メンバー間の調整に気を使います。メンバーそれぞれが最大のパフォーマンスを全ての分野で発揮できれば、それに越したことはありません。しかし現実はそう簡単にはいきません。

「この人はこの分野が得意だな」というのを見極めた上で配置なさっているのですね。

そうです。例えば、サーバーの開発をするのが得意な人と、画面の開発をするのが得意な人では、必要な技術が全く異なります。それぞれの特性を見極め、プロジェクトによりバランスよく配置しています。

社員が各自持ち合わせた長所をさらに引き伸ばせるような、環境づくりにも取り組んでおりまして、例えばe-Learningを導入し、新しい技術知識を学習しやすくしたり、社員同士で問題を出し合うためのクイズシステムを構築していたり、ペアプログラミングを推奨したりと、教育訓練プログラムとして一週間のうち5時間はこういった取り組みに時間を使うよう推奨しています。

セキュリティを考慮したバックアップの開発に注力

現在開発している新たなシステムなどありますでしょうか。

現在1番大きく開発が進んでいるのは、デジタルアセットマーケッツが提供している暗号資産取引所で展開している、ジパングコイン(国内初のデジタルゴールドといえる暗号資産)向けのサービスです。まだスマートフォン向けのシステムが無いので、新たに追加開発しているところです。今後もユーザー様の利便性を高めるために、システム面からバックアップしていきます。

まだ研究開発の段階ですが、バックアップシステムの開発も進めています。自然災害などを考えると、データを分散してバックアップしなければならないというニーズがあると思います。しかし分散すればするほど、セキュリティリスクも比例して上がるというのが現在の課題です。漏洩しても最低限のリスクで対応できるようなバックアップ方法やバックアップシステムを考えていたりします。定期的なバックアップをすることで、万一の復旧時は最新のデータでビジネスを安全に復旧し、継続することが一番重要です。

こういったシステムを開発する際に、負荷テストというのはどこまでするのですか。

例えば取引所のシステムをテストする際は仮の売買注文データを作り、テスト環境に対して大量にデータを流してみるなどの負荷テストを行います。ただ実際に100万件もの注文を作成して流してみるということは滅多にないです。もっと少ない注文、例えば10万件のデータ、20万件のデータ、30万件のデータを用意してそれぞれを流した場合の負荷がどう変わるかを計測します。それら複数のテスト結果を得れば、その結果を元に40万件の場合の予測ができるわけです。その予測を元にシステムのボトルネックや、限界値などを計算しています。

負荷テストの際は、「大量の注文を簡単に作るツール」で開発効率を上げています。プロジェクトに元々私が参加して全部作るという予定はないので、時間が余った時に、「今のプロジェクトでこういうツールがあったら便利だろうな」と思うものを作ります。

起きてはならない事だと思いますが、運用しているプロダクトで障害が起きるとどのような対応をされているのでしょうか。

例えば、プログラムの不具合が原因で障害が発生した時に、その場でプログラムを修正するというわけではありません。発生してしまった障害をうまく収める方が、その場では重要になります。例えばデータベースに保存された値がおかしい場合は、どう直せばうまくデータの整合性が取れるのかなど、どちらかというとその場の機転の方が大事だったりしますね。

障害が発生した際はアラートのようなものが出たりするのですか。

システムを運用している部門では監視もしております。例えばプログラムがログを出力したといったメールを受信したとき、エラーのログが出てなくてもアプリケーションが停止することが稀にあります。警告アラートが出力されると、執務室内の監視ルームにスタッフが集結し対策案を検討します。

こういった証券システムには遅延やバックアップによる情報漏洩などの課題があります。それらをクリアしていくこと、そしてチームメンバー全員のパフォーマンスを引きあげること、私はそれが開発トップの責務だと思っています。

※1 J1:1台の端末で各取引所システムの利用が可能な、オールインワン取引所端末。

※2 アービトラージ(裁定取引)…… 市場の価格差(歪み)を利用して利益を得る売買手法のこと。同一の価値を持つ商品の一時的な価格差(歪み)が生じた際に、割高なほうを売り、割安なほうを買い、両者の価格差が小さくなった時に反対売買を行うことで利益を獲得しようとする取引のこと。

Profile

田近 和也(たちか かずや) 
1975年生まれ

株式会社インタートレード業務執行役員
金融ソリューション事業本部
システム開発第一部長

  • 2008年10月(株)ブラディアを吸収合併したことにより、システム開発第一部副部長に就任
  • 2009年  6月部長昇格
  • 2011年  5月フェロー昇格
  • 2018年12月業務執行役員昇格
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